派遣とはどういう働き方か?

派遣社員とは、一般の正社員やパートタイム・アルバイトとも違った働き方で、人材派遣会社のスタッフの一員として、派遣先の別会社で働く雇用形態です。正社員や契約社員、またパートタイマーやアルバイトなどは雇用契約を結んだ会社の指示で業務を遂行しますが、この点で派遣社員は大きな違いがあります。派遣社員や派遣スタッフは、勤務先の会社・企業ではなく、派遣会社との雇用契約を結んでおり、派遣先との直接の雇用関係はありません。派遣先企業と派遣会社が契約を結んでいます。給与や社会保険、雇用保険また福利厚生はすべて派遣先の企業ではなく、派遣会社からの給付になります。労災保険や厚生年金なども派遣会社から給付されるほか、有給休暇や出産休暇なども派遣会社の規約に従うことになっています。

業務内容の指示は派遣先の会社から直接受けることになりますが、派遣社員が属しているのはあくまで派遣会社です。契約上の問題が生じた場合には、派遣先の会社から派遣会社に交渉してもらうのが基本で、たとえば休暇や残業などの契約についての認識の違いなどがあった場合には、派遣先の担当者から派遣会社へ確認を行うことになっています。このため、派遣社員は現場の指揮下にはありますが、同じ職場の同僚とは立場が違うことがほとんどです。とはいえ、長く同じ職場に勤めていれば、派遣先の同僚や上司とも良好な関係を築くことができ、相談に乗ってもらえることもあります。

派遣社員は、自分の得意な分野、やりたい業務をピンポイントで選ぶことができる働き方です。Web制作のスペシャリストであり続けたいとか、販売のプロとして役に立ちたい、語学力を活かした業務に就きたいなどといった希望をかなえることができます。むしろ、こういった専門的な業務に特化した社員を雇いたいというのが、会社側の希望です。派遣社員は、それまでの経験を活かして、雑務や無駄な仕事を一切せずに専門の業務にひたすら打ち込むことができる働き方です。たとえば女性の正社員には、お茶くみや掃除などといった雑務をこなすのが当たり前という風潮が今も日本の企業には根強く残っていますが、派遣社員にはこういった雑務はやる必要がないケースがほとんどです。

派遣社員を受け入れる会社側としても、正社員を雇用するよりも人件費を抑えられるケースが多く、必要な時期に必要な期間だけ、望ましいスキルを持った人材を雇用できるため、2000年前後から急速にニーズが増えています。景気が回復しつつある現代日本においても、働く側のニーズが高いために人材派遣の規模が拡大しつつあります。

日本における人材派遣の歴史

日本で人材派遣が本格的に始まったのは、1986年の労働者派遣法の施行からと言われています。そのため比較的新しい雇用形態であり、様々な問題点をはらみながら議論されてきて法改正などを経て現在に至ります。

今の派遣制度を理解して正しく活用していくには、法改正を含めてどのような変遷をたどったのか整理しておく必要があります。

日本に人材派遣を持ち込んだのは1966年のマンパワー・ジャパン設立以降とされています。

この会社は元々アメリカで広く用いられてきた人材派遣サービスを、日本国内の外資系企業への事務スタッフの派遣という形で導入しました。

会社にとっては雇用の調整に便利であり、正社員よりも手軽に業務のプロを安く雇えることから、国内の商社や銀行などが活用しはじめます。

派遣業に需要があることが分かったため、1973年のテンプスタッフの設立を始めとして、大手の派遣会社が70年代から80年代に誕生しています。

1980年代になって、人材派遣サービスは各種の企業で定着し始めます。

そのため、派遣を合法化して制度を整備する必要が出てきました。それまでは派遣という働き方は法律的には存在せず、請負という形での雇用形態でした。

初期の派遣法は、正社員の業務を保護する目的が強く、正社員の仕事をおびやかす危険の少ない専門的な13の業務にのみ派遣を認めていました。

以後、徐々に派遣社員が就業可能な業務は拡大していき、1996年には対象業務は26業務にまでなっています。

派遣法の転機となったのは1999年です。このとき、日本はバブル経済の崩壊や金融危機、デフレの長期化などの低成長期に入っており、直接雇用が企業によって負担となっていました。

産業界から、正社員の人件費を人材派遣の活用に置き換えて経費を抑えたいという強い要望が出されるようになります。こうした事情を受けて1999年、派遣の対象業務を原則的に自由化しました。

2000年には紹介予定派遣を解禁し、2004年には専門業務における派遣期間について無制限とし、また今まで禁止されていた製造業務への派遣社員の活用を解禁しています。

2004年の改革はインパクトが大きく、企業の経営戦略の一環としてアウトソーシング化を加速化させることになります。

派遣業務はこの法律改正によって広い範囲で活用されることになり、その流れが今に続いています。

篠原涼子さんが主演したドラマ「ハケンの品格」は2007年に放送され、大ヒットを記録しています。

この頃に派遣社員という働き方が世間に定着したと言われています。

派遣社員として働くメリットとデメリット

派遣社員とは、人材派遣会社のスタッフとして登録し、派遣先の別会社で働く雇用形態です。

正社員や契約社員などと違って、雇用契約を働く先の会社と結んでいないところが特徴です。

働く現場にはあくまで業務のプロとして派遣されており、給与や社会保険などの給付は派遣元になる会社から受けます。

派遣社員の大きなメリットのひとつが、希望の職種にピンポントで応募できることです。正社員でも業務内容はある程度選択可能ですが、自分の得意分野に絞リこめるのは派遣社員の方が確度が高いと言えます。

アパレル業界に就職して販売に関わりたいと思っても、正社員の場合には会社の命令によって他の部署で働かされるケースがありますが、派遣社員はアパレル販売を希望すればそこに絞って仕事を紹介してもらえます。

また、派遣元の会社と派遣先で契約した以外の仕事をする必要がないため、自分のやりたいことに集中して取り組むことが可能です。

正社員では、上司や会社からの命令であれば希望していない雑務に追われることも少なくありませんが、派遣社員は余計な雑務をしないで済みます。

また、派遣社員の給与は基本的に時給制であるため、働いた分だけの給料を受け取れます。

最近社会問題化している正社員のサービス残業は、派遣社員にはほぼ関係ありません。

仕事が忙しくなって残業を依頼された場合、働いた分だけの時給を支払ってもらえます。

また、派遣社員はその業務のプロであると認められており、時給もパートやアルバイトに比べて高めに設定されています。

だいたい時給1300円以上で、専門職では2500円以上になることもあります。

派遣社員のデメリットとして、給与と別途に交通費が支給されないケースが多いということが挙げれらます。

給与に交通費を含むという考え方です。派遣社員として働く場合には、時給だけでなく、勤務先への交通費を考えて勤務地の選択には注意する必要があります。

また、正社員にはボーナスが出ますが、派遣社員には基本的にボーナスが支払われることはありません。

時給ベースの給料が淡々と支払われるだけで、会社の業績アップにともなうボーナス増額に派遣社員は無縁です。

また、派遣社員は無期雇用の正社員とは違って、契約の期限が必ずやってきます。会社の業績やプロジェクトの終了などにともなって勤務先を失う可能性が高いと言えます。

契約終了で派遣先の仕事がなくなったら、また新しい仕事先を探す必要があります。そういった意味では雇用が不安定ということになります。

派遣社員がモラハラ、セクハラ、パワハラにあった場合の対処法

派遣先でモラハラにあってしまったら

派遣に限ったことではありませんが、近年では、職場における「モラルハラスメント」と呼ばれる新たなハラスメントが社会問題になっています。

モラルハラスメント(略称モラハラ)とは、暴力はないものの、相手を言動や態度でじわじわ傷つけ、不安にさせて心理的な洗脳や支配を行っていく行為のことを言います。

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派遣求人案件が多くなる時期と不要な案件の断り方

一口に人材紹介会社である派遣会社の求人案件と言っても、その業種は非常にたくさんあります。

多くの派遣会社ではこれまでの経験を踏まえた上で仕事を紹介するカウンセリングなども実施されているため、このような派遣スタッフと接する機会を大切にして、自分がどのような仕事に就きたいかなどの希望をしっかり伝えることが大切です。

カウンセリングの時点で希望の仕事が見つからなかった場合でも、希望条件はもちろんこれまでのキャリア経験やスキルに合わせた仕事の情報を、電話などで紹介してもらえます。

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派遣社員とアルバイトや契約社員、正社員との違いは?

派遣社員とアルバイトとの違いは?

正社員ではない働き方の代表例として、派遣社員とアルバイトという雇用形態が挙げられます。

このふたつは一見似ていますが、まったく違う雇用形態です。アルバイトでは、勤務先の会社や企業、お店などに直接応募して選考を経て、雇い主と直接雇用契約を結ぶことになります。多くの場合、勤務先が応募先と同一となります。

ショップの販売員であれば、ショップに直接応募して、受かればそのお店で働くことになります。派遣社員の場合には、このような直接雇用の形態でない点がアルバイトとは大きく違っています。

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